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Voice02大栄建設 三石博明さん・ふじ江さん・ 庄司紀子さん

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スピードスケートに青春を捧げた二代目社長

JR小海線・八千穂駅前に事務所を構える大栄建設は、住宅の新築とリフォームのほか、町の空き家バンクの物件の仲介も行う会社です。

二代目社長の三石博明さんは、幼い頃から遊びの延長で仕事を手伝い、ものづくりが大好きだったそう。「親父のノコギリを持ち出して、うちの框(かまち)なんかもみんな切っちゃってさ。怒られたよ」と笑います。

小学校3年生からはスピードスケートを始め、松原湖や旧八千穂村の佐口湖にできる天然のリンクで練習を重ねました。佐久高等学校(現 佐久長聖高等学校)に入学した年には県の選手権大会に出場し、高校生トップの成績を取るほどの実力でした。

学校では、大会に出ることを体育の先生にしか伝えていませんでした。三石さんが入った授業料免除のクラスでは、勉強に専念するために部活動は禁止されていたからです。ところが大会での快挙が新聞に載り、学校側は仕方なく三石さんがスケートを続けることを認めることに。それがきっかけで、同校にスケート部が設立され、三石さんは後にスケート部の監督も務めることになります。

スポーツ推薦で進学した明治大学でもスケートに明け暮れた三石さんは、必要最低限の単位を取って卒業し、東京の小さなハウスメーカーに就職しました。大学の就職課で相談したら、将来は家業を継ぐことを見越し、社長との距離が近い小規模な会社で経験を積むよう勧められたのだそうです。

その会社には4年務め、家を建てるお客さんの住宅ローンや登記の手続きなど、不動産に関わる仕事を担当しました。そのために宅建(宅地建物取引士)の資格を取ったのは運が良かった、と三石さん。それがきっかけで、大栄建設は不動産業も手掛けることになり、今の空き家バンクの仕事にもつながっているからです。

窓から八千穂駅を発着する列車が見える立地

窓から八千穂駅を発着する列車が見える立地

お客さんとの関係性を大事にする会社

事務所に併設のショールームには、これまで建てた住宅の模型が並ぶ

事務所に併設のショールームには、これまで建てた住宅の模型が並ぶ

三石さんを公私ともに支えるパートナーのふじ江さんは、結婚当初は佐久市の警察署に勤めていました。しかし、先代が体調を崩し、事務を担当していたお姑さんが看病することになったため、そのあとを引き継ぐべく大栄建設に入社しました。

三石さんによれば、新築の相談しか受け付けなかった大栄建設がリフォームも手掛けるようになったのは、ふじ江さんのおかげだそうです。

三石さん:「当時、既存住宅のメンテナンスや小工事の要望があっても、忙しくてそんなことできないと思ってたんだよね。でも彼女は、『そういうこともしっかりとやって、お客さんのニーズの受け皿にならなきゃ』って、ひっきりなしに言うわけ。それで、リフォームをやるようになったんだよ」

2018年まで20年間続けた「大感謝祭」も、ふじ江さんの提案でした。新築やリフォームで関係ができたお客さんとのコミュニケーションのために、社員が豚汁や焼きそばなどを振るまったり音楽を演奏したりして、楽しく過ごしてもらうイベントです。

地域の方も招いて大いに盛り上がるイベントでしたが、ここ数年は開催していません。イベントのために社員がかけるエネルギーもかなりのもので、「工事をお待たせしているお客さんもいるのに、お祭りをやっていていいのか?」という疑問が社内で生まれてきたからです。「お客さんのために何をすべきか」を真剣に考える社風が伺えます。

移住者の存在に期待

「大感謝祭」の開催を見合わせた頃、社内の人手不足や自身の年齢もあって気力が落ちていたという三石さん。町役場から声をかけられ、空き家バンクの物件の仲介を始めたのはそんなときでした。

三石さん:「こんな山奥にどんな物好きが来るんだろうと思っていたら、1年目から来るわ来るわ......。しかも、皆さんの表情が活き活きとしてるんだよね」

ちょうど大日向小学校が開校するタイミングで、子どものいる家族がたくさんやってきたのです。

三石さん:「自分たちにしてみれば、ここは田舎で何もないし、若い人たちは出て行くばっかりで、未来はないような気がしていてね。でも、空き家をご案内した人たちはみんな、『すごくいいところですね!』って言ってくれるの。『静かで虫の声が聞こえますね』とか、『自然に溢れてますね』とか、うちらにしてみれば当たり前のことを喜んでくれるんだよね。そういう人たちが、今では新しいお店を始めたりして町を盛り上げてくれている。もう、びっくりしちゃって。だったら俺もがんばらなきゃなと、一生懸命対応しているところです」

新規就農を目指して、町の山間部に移住する人は以前からいました。しかし、それ以外の集落に移住者がやってくることは、それまでは珍しかったそう。そういうところでは、よそ者を受け入れてもらえるのかが気になるところです。

空き家バンクに登録された物件の調査や、見学者の案内を担当している庄司紀子さんによれば、「若い人が来てくれることに期待をされている方が多い」とのこと。三石さんも「空き家だったところに明かりがつくだけでも、嬉しいよね」と請け合います。

三石さん:「この辺りでは"おてんま"って言って、地域の掃除や草刈りなんかはそれぞれの家から人が出てきて、自分たちで支え合う習慣があるんだよ。高齢化でそれが難しくなっているところもあるから、体力のある若い世帯が一組でも来てくれれば、集落にとっては希望だよね」

移住者も地元の人も、変化を受け入れて

地域の活動にどのようなものがあり、どの程度の参加が求められるのかは、同じ町の中でも集落によって違いがあります。気候や文化も、町の中心部なのか山の中なのか、佐久穂町として合併する前にどの町村に属していたかなどによって変わります。

大日向小学校に子どもを通わせるため、自身も佐久市に移住してきた庄司さんは、「家を決める前に、地域のことをよく知って」とアドバイスします。

庄司さん:「移住には生活の変化がつきものです。心の準備のないまま移住すると変化に押しつぶされてしまうかもしれません。そうなると、移住する側も期待して受け入れてくれる側も、お互い苦しいですよね。候補となる地域があれば少し滞在して、地元の方のお話を聴いてみましょう。町役場には移住の支援をしてくれる地域おこし協力隊もいて、『この地域のことを知りたい。誰か紹介してください』といった相談もできますよ」

一方で三石さんは、受け入れる地域の人たちも変わっていかなければ、と語ります。

三石さん:「以前から新規就農で来ていた人たちは、"おてんま"に出たり消防団に入ったりして地元に溶け込んできたんだよね。それがかつてのやり方だけど、逆もあるんじゃないかな。地元の人たちが、新しく来てくれた人たちのやり方を取り入れ、お互いに溶け込んでいくということも必要なんじゃないかと思うんです。
移住者の皆さんは、この田舎の自然がいいと言ってくれる。でも、ここに暮らしてきた人たちって仕事場と家の往復ばかりで、意外と田舎の生活を満喫していなかったりするんだよ。この町の良さを、新しく来た人と一緒に楽しんでいけるようになりたいですね」

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